散骨とは? 散骨の意義、流れ、費用、留意点など

1.散骨による埋葬とは

これまでの遺骨の扱いは、これまでは墓や納骨堂に安置する場合が多かったです。
しかし近年、亡くなられた方の思いを尊重した自然葬という形態が広がりつつあります。現在日本で行われている主な自然葬は、大きく散骨と樹木葬の2つがあります。
この項では、そのうちの散骨について解説します。

散骨とは、「遺骨を埋葬せず、こまかく砕いて海・野山などにまくこと。また、その葬礼。」(国語辞典「大辞林」より)というものです。日本では、散骨は長らく法律に規定がなく違法と考えられていました。

しかし、平成3(1991)年10月に葬送の自由をすすめる会(現本部 東京都千代田区、全国に支部あり)が、相模灘で自然葬(散骨)を行い話題となりました。

その後速やかに、当時の厚生省(現 厚生労働省)は「(現行の埋葬に関する法律は)遺灰を海や山に撒く葬法を想定しておらず法の対象外である」旨の見解を発表し、法務省も「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪に該当しない」旨の見解を発表しました。

これらの取り組みや国の見解がきっかけとなり、「節度を持って行われる散骨であれば問題ない」という認識が広がり、散骨などの自然葬が幅広く行われるようになりました。

世界的にみれば、散骨はごく自然に行われてきました。日本国外であれば物理学者のアインシュタイン、インドの無抵抗革命を主導したガンジー、ビートルズのメンバーで音楽家のジョージ・ハリスンなどがそうです。
日本国内でも、勝新太郎(役者)、横山やすし(漫才師)、いずみたく(作曲家)、石原裕次郎(俳優、歌手)などの著名人が海洋散骨されています。

2.散骨の意義

亡くなった時に遺骨の散骨を希望される方の思いは様々です。ただ、その中でも大きな要因の一つは、本当の意味で亡くなった方が自然に還ることができることです。これは、樹木葬などの自然葬に共通することです。墓であればカロートという遺骨を入れるコンクリート製のスペースに、納骨堂であれば骨壺が納骨堂の所定のスペースに、それぞれ保管されることになります。これらの保管方法では、骨が自然に還ることができないとも言えます。

もう一つは、亡くなられた方の生き様を踏まえた希望を叶えられることです。例えば、石原裕次郎のように自らヨットを持ち、海をこよなく愛していたことは生前からよく知られていたことです。海上自衛隊や海軍に所属して長く海とともに生活してきた人にとっても、海に対する思い入れがあるかもしれません。海に限らず、その生き様から特定の土地に対する思い入れがあって、そこに散骨してほしいという人もいるでしょう。

その他には、遺骨はきれいさっぱり処分してもらい、後は気遣いないようにしてほしいという思いの方もいるでしょうし、中には生前から狭いところは嫌いだったので、墓や納骨堂は勘弁してほしいという方もいるかもしれません。

3.一般的な散骨の流れ

散骨は海洋で行う場合と、陸上で行う場合がありますが、もともと日本では海洋で行われたことが、大がかりに行われた最初であり、現在も海洋散骨のサービスを提供している事業者が複数いることから、そのサービスの提供をしている事業者に依頼する場合の流れをまず記します。

○海洋散骨の流れ

事前の準備1
遺骨のお預かり
申し込み、事前打ち合わせ等を含む
事前の準備2
遺骨の粉末化
散骨当日1
乗船
散骨当日2
散骨
希望に応じて献花、献杯
散骨当日3
黙祷
散骨当日4
帰港
((有)風の事例より引用)

なお、陸上での散骨のサービスを提供している事業者もいます。(例 前述の「葬送の自由をすすめる会」)

事業者に頼らず自身で行う場合には、後述するように節度を持って行えるように準備を進めて行う必要があります。

海洋散骨であれば、骨を粉末化する方法(遺族が行えれば問題ないですが、遺族が行うのに抵抗があるのであれば、誰かに頼む必要があります(粉骨サービス)。)、散骨時の船の手配、散骨そのものの方法の決定(骨を参列者で小分けにして紙に包んで海に投げ込むのか、粉末化した骨の入った器から一息に海に放り出して撒くのかなど)、献花、献杯の段取り、終了後の儀式(必要であれば)などを検討する必要があるでしょう。

陸上での散骨であれば、上記に記した内容に加え、散骨する場所の土地の所有者(国有地、都道府県及び市町村有地であれば、その管理者)に了解を得る必要があります。

4.実施に当たっての費用

海洋散骨については、サービスする事業者によってまちまちですが、概ね次の区分のサービスがあり、費用が異なります。

  1. 個人散骨(遺族1組が、船をチャーターして行うもの)
  2. 合同散骨(事業者が日程を揃えて数組の遺族で一緒に行うもの)
  3. 委託散骨(一般の合同墓のように、希望される不特定多数の方の遺骨を粉末にして散骨するもの、遺族等の参列は不可)
価格としては、同じ事業者であれば①が最も高く、②、③になるにつれて
安価になります。
具体の価格については、千差万別ですが、大まかには①で20万円程から30万円台、②は①より安価、③は数万円といったところです。いずれにしても、ネットでの情報収集などを行い、ある程度事業者を絞り込んで、具体的な価格や条件を予め確認した上で、依頼の是非を判断することが必要です。

①の個人散骨にかかる経費は、少なくとも民営(寺院の経営を含む)の墓や納骨堂に入れて永代供養するよりは、安価な可能性が高いです。ただ、公営の墓地は民営のそれに比べて安価なので、公営の墓地の確保が可能な場合は、墓地での埋葬に比べてどちらかが安いかは個別に検討してみる必要があります。

5.実施に当たっての留意点

何よりも重要なのは、一度すべての骨を散骨してしまえば骨の回収は不可能だということです。もし、それが心残りになるということであれば、骨の一部を別の形で供養(手元供養など)を行うように予め決めておき、そのように段取りすることが必要です。

その上で、実際に散骨を行う場合には、次の点に留意する必要があります。

事業者のサービスを活用する場合には、事業者が基本的には配慮もしますし、注意点も教えてもらえると思いますが、ここでは御自身で行う場合も想定して、留意すべき点をいくつか記しておきます。

最初に、最も重要なことは「節度を持って行う」ということです。散骨は法律上の規定は特になく、国の省庁の見解も「節度を持って行うのであれば」問題ない、という立場です。
逆に言えば、節度を持って行わなければ、法律的な問題が生じる可能性もあるということです。

海洋散骨であれば、人目がつく海水浴場や漁場などがある場所のそばではない、適度な沖合で行うことが前提となります。また、散骨のために船をチャーターして行うことが多いと思われますが、万一、一般客も同乗している船で行う場合には(前提として、その船で行う了解を得ていることが当然必要ですが)、同乗している一般客に気を使わせない配慮も必要です(仰々しく参列者が黒装束で大掛かりな儀式をするのは了解を得ていなければ論外)。

陸上散骨であれば、前述したようにまず散骨したい場所の所有者(または管理者)の了解を必ず得ることが必要です。国有地なら承諾不要という記事も散見しますが、国有地にも所管している省庁や担当が必ずあります。書類での手続きが必要かどうかは別にしても、まず必ず散骨の是非を電話や電子メールなどで確認しましょう。その上で必要な手続きが必要とのことであれば、その指示にしたがい対応してください。断られた場合には、残念ですが別の場所を探してください。都道府県や市町村の所有地も同様です。
また、海洋散骨と同様に、人目につく場所で散骨を行う場合には、周りの関係のない人に気を使わせない配慮も必要です。

6.まとめ

家族の形もライフスタイルも多様化が進む中、それにあわせてお墓の形も多様化してきています。
散骨には、これまでに記した意義がある一方で、デメリットもあります。
意義としては、亡くなられた方の思いを葬送に生かせると言えます。一方ですべて散骨してしまうと骨の回収は不可能であることや、法律的な規定がない替わりに、葬送者が自主的に「節度と持った」内容を決めて執り行わなくてはなりません。費用的にも公営の墓地での埋葬と比較した場合、必ずしも安価とならない可能性があります。
このように、ある方にはメリットであっても他の方にとってはデメリットのこともありますし、その逆もまた然りです。
散骨のよいイメージのみにとらわれず、その意義とその他の要素も考慮した上で、亡くなられた方、残された家族の方がそれぞれ納得できるお墓選びをすることが大切です。
そうした中で散骨も一つの選択肢として考えてみられてはいかがでしょうか。