樹木葬とは?樹木葬の種類、メリット・デメリットなど

樹木葬とは

遺骨の行方については、これまでは墓地の墓や納骨堂に埋葬されることが多かったのですが、最近は、様々な埋葬の形が広がっています。

その中には、自然葬という形があり、具体的には散骨と樹木葬に分かれます。

ここでは、その中の樹木葬について、解説します。

樹木葬と言うと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか。
おそらく、日本の昔話の「花咲か爺さん」で犬が木の根元に埋葬されるようなイメージを持つのではないかと思います。

現在知られている樹木葬という言葉を生み出したのは、岩手県一関市にある祥雲寺の住職と言われています。このお寺が始めた樹木葬墓地は、土の中に直接遺骨を埋葬し、墓石の代わりにその地の生態系に合ったヤマツツジ、エゾアジサイ、レンゲツツジなどの花を付ける低木を植える仕組みです。

この内容は先ほど記した「花咲か爺さん」のイメージに近いものです。しかし、現在はこの形を出発点として多様な形が生まれており、一口に樹木葬と言っても、それらの共通点は、そこにある樹木を墓標の代わりにしていることだけと言っていいほどです。そのバリエーションは墓全体のそれとほとんど変わりがないと言っていいでしょう。

代表的に樹木葬の例

具体的な場所、内容などは、樹木葬なびなどで検索できます。

その中にあって、現在ある樹木葬の主な形態として、次のものが挙げられます。

まず、設置形態から、社会学者の井上治代氏は次のように分類しています。

 

所在地 農村 里山型樹木葬
都市 都市型樹木葬
墓地 単独型 雑木林等を樹木葬専用として認可を受けた樹木葬墓地
エリア型 墓地内に一般墓と並存する形式の樹木葬エリア
墓所 個別型 個別で使用する(住宅でいう戸建て)
集合型 個別区画が隣接する形で1つの墳墓をなす(住宅でいう集合住宅)
合葬型 1つの墓に不特定多数の人が一緒に埋葬される

(井上和代:現代日本における樹木葬の実態と今後,ライフデザイン学研究,11(2005)235より引用)

また、見た目からは次のように分類できます。

  1. 土に直接埋葬し、その場所花の付く樹木を植えたもの(先に挙げた樹木葬発祥の祥雲寺の樹木葬 墓地がこの形)
  2. 墓地のシンボルとなる木が1本あり、その敷地の中に区画された墓地があり、洋式の低い墓石を 置いた墓
  3. シンボルとなる木の周りの複数の低い墓石をサークル状に配置した墓
  4. 庭園風に花を植え、それらに囲まれた低い墓石

(参考:みんなの終活(北海道新聞社編))

樹木葬の意義

このように、多様な樹木葬の形態がありますが、共通した特徴として、次の内容が挙げられます。

  • 亡くなった方が自然に還るというイメージがある(カロート(墓の中に遺骨を納める場所)がある墓地の場合は実際にはそうなっていないが)。
  • 散骨と異なり、樹木と言う墓標に相当するものがあるので、弔いができるという印象がある。
  • 生前の予約が多い。
  • 法律で規定された認可を得ている(同じ自然葬である散骨は法律での規定はない)。

樹木葬のデメリット

前述したとおり、樹木葬のバリエーションや形態は一般的な墓とほとんど変わらなくなってきており、価格そのものは安価とは限りません。同様の形態で比較すれば、樹木がある分だけむしろ高い場合もあります。

また、直接骨を土に埋葬したり、合葬墓となる場合は、後日の遺骨の回収や墓の移動は不可能というデメリットもあります。

樹木葬を選択する際に

埋葬の形を生前に決めておきたい場合には、その旨を家族に伝えたり、エンディングノートで具体的な内容を残す必要があります。
特に、生前に樹木葬の予約をしている場合には、その内容が亡くなっても解るようにしておかなくてはなりません。

生前に、樹木葬をしてほしいかどうかを選択するためには、具体的に次の点を考慮するのがよいでしょう。

樹木葬の趣旨に自分が共感しているか

先に記したとおり、樹木葬を選択する意義は、大きく次の2点です。

  • 亡くなった方が自然に還るというイメージがある。
  • 樹木と言う墓標に相当するものがあるので、残された方も弔いしやすい。

この2点に共感できるかどうかが、最も重要です。
また、樹木葬の候補としているその場所が、自分が永眠する場として納得できる場所であるか(花々に囲まれたい、眺めがよい、その他の雰囲気が気に入った、など)も重要です。

その上で、現実的な問題として次にあげる点を検討しましょう。

埋葬の形がどうか

具体的には、区画墓地、合葬墓、直接埋葬のいずれかを確認することが必要です。
区画墓地の場合は、将来残された親族が供養を辛く感じた場合に、墓の場所を都市部の納骨堂に変えたり、合葬墓に移すことなどが可能となります。
一方、合葬墓と直接埋葬の場合には、再び遺骨を取り出すことはできないので、埋葬場所を移すことはできません。
残される人のことを考えると、合葬墓や直接埋葬を選択する場合には、将来負担になったらもう放っておいていいと言い残して置くことも必要となるでしょう。

永代供養の具体的な内容はどうか

樹木葬は、その性質から基本的には永代供養を想定している場合が多いですが、実際の取り扱いは多様化が進んでおり、一定期間は区画墓地で埋葬し、その後は合葬墓などに移すような事例もあります。
また、費用も最初に一括して支払って済む場合と、初期費用を払った後に毎年管理料を支払わなければならない場合があります。
今のところ、文献等から明らかではありませんが、これまでの墓での事例から、樹木葬に伴って特定の寺院等の檀家になった場合、不定期にお布施などを求められる可能性もないとは言えないので、このような将来的な負担についても、予め確認しておく必要があります。

必要な金額は負担可能なものか

樹木葬は、当初の形態から多様化が進んでおり、シンボルツリーの周りを様式の低い墓石並ぶ区画墓地といった場合もあるなど、従来の高さのある墓石を使う場合が少ないことを除けば、そのバリエーションは、一般的な墓とそう変わりがないと言えます。

また樹木葬には、花々をたくさん飾った庭園葬とでもいえるようなものもありますが、そのような形態になると墓地の維持に費用が掛かるため、その分墓を立てる人への負担が増えることになります。

したがって、最初に支払う費用と将来的な負担の有無、ある場合は具体的にどのような内容があるかを、事前に確認しておく必要があります。

亡くなった後に供養する人にとって過剰に負担にならないか

最近は、若い女性の間では、住んだことがなくても、観光などで訪れて気に入った場所に墓地を生前予約する事例もあります。

それも一つの選択ですが、亡くなった後に残される方の住む場所から、樹木葬の場所が遠かったり行くうえで不便な場所にある場合には、供養することも考慮して、最終的な判断をすることが望ましいです。
そうしなければ、結局は最終的には放置されていずれは合葬墓に弔われて終わり、ということになる可能性もあります。それを希望することも一つの選択ではありますが、このようなことも含めて十分考えてみることが必要でしょう。

まとめ

家族の形もライフスタイルも多様化が進む中、それにあわせてお墓の形も多様化してきています。
樹木葬には、これまでに記した意義がある一方で、デメリットもあります。
ある方にはメリットであっても他の方にとってはデメリットのこともありますし、その逆もまた然りです。
樹木葬のよいイメージのみにとらわれず、樹木葬の意義とその他の要素も考慮した上で、亡くなられた方、残された家族の方がそれぞれ納得できるお墓選びをすることが大切です。
そうした中で樹木葬も一つの選択肢として考えてみられてはいかがでしょうか。